アクティブミノルは2012年産のサラブレッドでは一番早くJRA重賞勝ち馬となった馬です。
同馬はグランデファーム代表・衣斐浩が配合を考えた馬の一頭です。
「ピエナアマゾンの相手として、スタチューオブリバティを配合すれば一番高い評価ができる」と判定し、生産牧場のフジワラファームさんがその配合を選択された事で誕生した馬ですが、この配合を推奨した根拠を公開します。
私は3大血脈と定義している、超一流の遺伝力を発揮したNorthern Dancer、Nr. Prospector、Mill Reefの3頭の血統に着目し、それぞれを構築する「いくつかの重要な血」をクロスさせれば優秀な馬が出やすく、これに加えてTeddy系をはじめとする異系の血が必須だと考えています。
母ピエナアマゾンの血統で、まず注目できるのは「Haloクロスを持っている」事です。
配合相手にNorthern Dancerがあれば、Northern Dancerクロスが単に発生するだけでなく、Almahmoudクロス(サンデーサイレンス系の配合で大定番)も併せて発生し、更にその父Mahmoudもクロスが継続します。
さらにピエナアマゾンは母の父がKingmambo(Native Dancer直系)ですから、同時にNative Dancerクロスも発生します。
つまり、アクティブミノルの配合は、雑誌(サラBLOOD! vol.3)のインタビュー記事で公開した『Northern Dancerクロスの鉄板配合』の3条件のうち2条件を満たせる事になり、3大血脈Northern Dancerをかなり高いレベルで再現できていると判断できます。(あとはLady Angelaクロスがあれば満点といえる内容です。)
次に異系の血による活力があるかどうかですが、ピエナアマゾンは「アグネスタキオン×Kingmambo牝馬」という配合であり、異系の血は十分入っているとすぐに判断できます。
アグネスタキオンの祖母アグネスレディー、Kigmamboの祖母Pasadobleは、アメリカ血統が主体の本馬にとって典型的な異系血統なのです。
これに加えてアクティブミノルは、Tom Foolの5×5という異系クロスを持ち、そのTom Foolはその父Menowを6・7×6・8・8とクロスを継続させています。
さらにTom Foolの母の父であるBull DogもTeddyクロスと継続させてあり、おまけにTom Foolの祖母の父Equipoise(エクイポイズ)は、強力な異系血統であるDomino系のクロスです。
この「Menow×Bull Dog牝馬」というTom Foolの配合は、父内Storm Catの4代母First Rose、母内のReg Godの母Spring Runの血統、とも全く同じという点は強調しておきたい部分です。
Tom Fool 牡 1949年 30戦21勝 1953年全米年度代表馬&全米最優秀スプリンター | ||
(色塗り部分はアクティブミノルの血統内でクロスしている箇所) | ||
◯Menow
1935年 |
Pharamond
1925年 |
Phalaris |
Selene |
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Alcibiades
1927年 |
Supremus | |
Regal Roman |
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Gaga
1942年 |
◎Bull Dog
1927年 |
Teddy |
Plucky Liege |
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Alpoise
1937年 |
Equipoise ~祖父Peter Pan (+)Commando系 |
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Laughing Queen |
・
First Rose (Storm Catの4代母) 牝 1946年 | ||
(色塗り部分はアクティブミノルの血統内でクロスしている箇所) | ||
◯Menow
1935年 |
Pharamond
1925年 |
Phalaris |
Selene |
||
Alcibiades
1927年 |
Supremus | |
Regal Roman |
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Rare Bloom
1935年 |
◎Sir Gallahad
1920年 |
Teddy |
Plucky Liege |
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Rowes Bud
1917年 |
Broomstick | |
Cherokee Rose ~父Peter Pan (+)Commando系 |
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Commando 5 x 5 |
・
Spring Run (Red Godの母) 牝 1948年 | ||
(色塗り部分はアクティブミノルの血統内でクロスしている箇所) | ||
◯Menow
1935年 |
Pharamond
1925年 |
Phalaris |
Selene |
||
Alcibiades
1927年 |
Supremus | |
Regal Roman |
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Boola Brook
1937年 |
◎Bull Dog
1927年 |
Teddy |
Plucky Liege |
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Brookdale
1921年 |
Peter Pan (+)Commando系 |
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Sweepaway | ||
Commando 5 x 4 |
私は単なるクロス(※Tom Fool単独)に比べて、相似の血統(※Spring Run、First Rose)を含めたクロスの方がより強く作用すると考えています。
アクティブミノルの場合は、「Tom Foolの5×5クロス」というよりはむしろ、「Tom Foolの6・5×5・7クロス」というべき内容で、しかも前述したようにTom Fool内部もMenowを継続させたり、Bull DogやEquipoiseなど複数の異系クロスが発生しており、非常に強力な配合になっています。
Equipoiseは自身が名馬&名種牡馬でもありますが、その祖父Commandoがほぼ無敗の競走成績を残し、種牡馬としては全産駒わずか27頭で米チャンピオンサイアーになった名馬であり、Commandoの父Dominoもアメリカ競馬史に残る快速馬で、種牡馬として全産駒わずか20頭の中からベルモントS馬と英オークス馬を輩出、という驚異的な遺伝力を持った異系血脈です。またこの系統は名馬Native Dancerの血統でも重要な血でもあります。
アクティブミノルのTom Foolクロスに、Domino系Equipoiseのクロスが加わるのは大きなプラスポイントで、この血が入ると、若干もまれ弱い所はあったとしても、馬力のある走りを見せる馬が多い印象です。
さらにTom Fool、First Rose、Spring Runに共通する「Phalaris系種牡馬×Bull Dog系牝馬」という配合はStorm Birdとも配合が似ています。
Storm Birdの血統表
Northern Dancer 1961 鹿 |
Nearctic 1954 黒鹿 |
Nearco その父Pharos-祖父●Phalaris |
Lady Angela | ||
Natalma 1957 鹿 |
Native Dancer | |
Almahmoud | ||
South Ocean 1967 鹿 |
New Providence 1956 鹿 |
Bull Page その父Bull Lea-祖父◎Bull Dog |
Fair Colleen | ||
Shining Sun (◎Bull Dog5×4クロス保有) 1962 鹿 |
Chop Chop | |
Solar Display |
アクティブミノルの配合はこのように複数の相似な血統を生かす事ができているのです。
さらに異系であるTorbillon系の名牝Missy Babaの5×6という牝系クロスも発生しています。牝系クロスはそれ自体でプラス材料と考えていますが、それがTorbillon系ですから言う事なしです。
細かい部分ではスタチューオブリバティの母の父はSeattle Slewですから、PolynesianクロスがNative Dancerクロスに継続しており、深味を加えていました。
以上のことから、アクティブミノルは異系の血を十分に備えた血統であると判断できます。
アクティブミノルの配合は一言で言うならば「Northern Dancerを高いレベルで再現した事でマイルからクラシックディスタンス向きのスピードを備え、異系の活力あるスピードを何重にも備え、爆発力ある配合」と高く評価できます。
函館2歳ステークスを制した時のレースぶりは、ダッシュが良くなかったのに簡単に先手を奪い、最後は後続を引き離してゴールしましたが、配合の見立て通りのレースぶりでした。
スタチューオブリバティ産駒全体の傾向として、一本調子な点と、長距離は苦手とする傾向がありますので、距離はマイルが限界だと思いますが、気分良く走らせればものすごい破壊力を見せてくれるはずです。
アクティブミノルの血統表 (異系の部分を黒塗りしてあります)
スタチューオブリバティ 2000 黒鹿 |
Storm Cat 1983 黒鹿 |
Storm Bird 1978 鹿 |
Northern Dancer 1961 鹿 |
Nearctic |
Natalma | ||||
South Ocean 1967 鹿 |
New Providence | |||
Shining Sun | ||||
Terlingua 1976 栗 |
Secretariat 1970 栗 |
Bold Ruler | ||
Somethingroyal | ||||
Crimson Saint 1969 栗 |
Crimson Satan | |||
Bolero Rose | ||||
Charming Lassie 1987 黒鹿 |
Seattle Slew 1974 黒鹿 |
Bold Reasoning 1968 黒鹿 |
Boldnesian | |
Reason to Earn | ||||
My Charmer 1969 鹿 |
Poker | |||
Fair Charmer | ||||
Lassie Dear 1974 鹿 |
Buckpasser 1963 鹿 |
Tom Fool | ||
Busanda | ||||
Gay Missile 1967 鹿 |
Sir Gaylord | |||
Missy Baba | ||||
ピエナアマゾン 2007 栗 |
アグネスタキオン 1998 栗 |
サンデーサイレンス 1986 青鹿 |
Halo 1969 黒鹿 |
Hail to Reason |
Cosmah | ||||
Wishing Well 1975 鹿 |
Understanding | |||
Mountain Flower | ||||
アグネスフローラ 1987 鹿 |
ロイヤルスキー 1974 栗 |
Raja Baba | ||
Coz o’Nijinsky | ||||
アグネスレディー 1976 鹿 |
リマンド | |||
イコマエイカン | ||||
ロイヤルリフ Royal Riff 1996 栗 |
Kingmambo 1990 鹿 |
Mr.Prospector 1970 鹿 |
Raise a Native | |
Gold Digger | ||||
Miesque 1984 鹿 |
Nureyev | |||
Pasadoble | ||||
Royal Revels 1991 |
Rahy 1985 栗 |
Blushing Groom | ||
Glorious Song | ||||
Royal Folly 1966 栗 |
Tom Fool | |||
Golden Sari |
単純に「スピードに、さらにスピードを加える配合は、単なるスプリンターになる」のはケン・マクリーンの著書「クラシック馬の追求」の序盤にも書かれている事ですが、アクティブミノルの配合においては配合の工夫によって、重要な血を継続クロスや4分の3同血クロスで補強する事を目指して配合し、母ピエナアマゾンが持つ血統の良さを存分に活かせることが出来ました。
これがアクティブミノルがスタチューオブリバティ産駒初の重賞勝ち馬となる成功を収めた一つの要因となったのではないかと考えています。
(2015年9月13日 加筆修正)
(2015年9月14日 加筆修正)
(2015年10月4日 加筆修正)